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Gilead Sciences、Merck、Theratechnologies Inc.およびViiV Healthcareの後援によるものです
2017 Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections
抗レトロウイルス治験薬(ARV)
治療歴のない患者におけるFTC/TDFまたはABC/3TCとの併用でのドラビリンまたはダルナビル + RTV
Charles B. Hicks博士(MD):
現代のARTレジメンは成功しているにもかかわらず、新規のHIV治療薬の開発は続いており、CROI 2017でもさまざまな開発段階にある多岐にわたる薬剤が紹介された。そのうち開発サイクルのより進行した段階にあるのが、特有の耐性プロファイルを有し、薬物間相互作用が最小限の次世代NNRTIであるドラビリンである[34,35]。Molinaら[36]は、治療歴のないHIV感染者769例を対象とした無作為化、二重盲検、第III相試験を実施し、ドラビリン100 mg 1日1回(385例)とDRV 800 mg+RTV 100 mg 1日1回(384例)を比較した。いずれもFTC/TDFまたはABC/3TCと併用し、最大96週間投与した[37,38]。DRV+RTV+NRTI 2剤は、唯一ガイドライン推奨に残っているPIベースの初回ARTレジメンである[37,38]。大部分の患者はTDF/FTCを併用し、各群13%の患者がABC/3TCを併用した[36]。主要評価項目は「48週目のHIV-1 RNAが50コピー/mL未満」であった[36]。
48週目においてドラビリンはDRV + RTVと比べて非劣性(FDAスナップショット)
Charles B. Hicks博士(MD):
本試験の結果はきわめて良好であった。48週目の時点でウイルス学的抑制を達成した患者はドラビリン+NRTI 2剤投与群が84%、DRV+RTV+NRTI 2剤投与群は80%であった[36]。48週目の群間差は3.9%(95% CI:-1.6%~9.4%)で、非劣性マージン10%を満たしていた。ウイルス学的無効(11% 対 13%)およびデータなし(5% 対 7%)の割合は、両群間で同等であった。治療失敗で耐性が予測される他のNNRTIベースレジメンでの経験とは対照的に、不遵守によりドラビリンおよびFTC耐性を発現して治験を中止したドラビリン群の1例を除き、いずれの群でもウイルス学的失敗例から薬剤耐性は検出されなかった。
FTC/TDFまたはABC/3TCとの併用におけるドラビリン 対 DRV + RTV:安全性

3TC:ラミブジン、ABC:アバカビル、AE:有害事象、BL:ベースライン、DOR:ドラビリン、DRV:ダルナビル、FTC:エムトリシタビン、HDL-c:高比重リポタンパク質コレステロール、LDL-c:低比重リポタンパク質コレステロール、RTV:リトナビル、TDF:テノホビルジソプロキシルフマル酸塩
Charles B. Hicks博士(MD):
ドラビリンとDRV+RTVは安全性プロファイルも類似しており、1件以上のAEの発現(80% 対 78%)、治療に関連するAE(31% 対 32%)、重篤なAE(5% 対 6%)および中止に至ったAE(2% 対 3%)の発現率は同等であった[36]。しかし、第二世代PIとして脂質プロファイルに関して、良い選択肢であるとされてきたDRV+RTVと比べて、ドラビリンは優れた脂質プロファイルと関連した。この点については、以下でさらに論じる[39,40]。このように、ドラビリンはHIV患者において効果的かつ安全なファーストライン治療の選択肢であると思われる。
しかし、本剤が初回ARTとして承認された場合、本剤を現在の治療方法の中でどのように位置づけるかを決定するのは困難だと思われる。現在得られているデータでは、私の患者にとって経済的利点がないのであれば、本剤を初回治療として、現在またはまもなく利用できるINSTIベースのARTレジメンよりも優先して選択する状況になるかは不明である。
Joel E. Gallant博士(MD, MPH):
ドラビリン合剤はジェネリックのTDFおよび3TCを含むように開発されており、ドラビリンベースのレジメンには価格競争力があると考えられる。しかし、それ以外の点では、現在広く用いられているINSTIベースのレジメンと比べて明らかな利点はないという見解に同意する。1つの不利な点として、ドラビリンはINSTIとは比較されておらず、いずれも初回治療としては一般的に使用されていないエファビレンツ(EFV)およびDRV+RTVとの比較しか実施されていないという点である。また、DRV+RTVがいまだにガイドライン推奨の初回治療選択肢である唯一の理由は、その耐性障壁の高さにあり、この利点はドラビリンには当てはまらない。このため、ドラビリンが最終的にガイドライン推奨レジメンにならない場合、たとえ価格競争力があっても、本剤の先行きを占うことは難しい。しかし、本剤には初回治療薬としての固定用量配合剤以外の用途があるかもしれず、このクラスの他のすべての薬剤よりも利点があると思われる。
治療歴のない患者におけるビクテグラビル + FTC/TAF 対 DTG + FTC/TAF

BIC:ビクテグラビル、DDI:薬物間相互作用、DTG:ドルテグラビル、FTC:エムトリシタビン、HBV:B型肝炎ウイルス、HCV:C型肝炎ウイルス、RAV:耐性関連変異、TAF:テノホビルアラフェナミド
Joel E. Gallant博士(MD, MPH):
ビクテグラビルは新規のブーストなしの1日1回INSTIで、INSTI耐性変異に対し有望な耐性プロファイルを有し、薬物間相互作用の可能性が低く、特有の薬物動態を示す[41-47]。
本第II相試験では、治療歴のない患者98例をビクテグラビル75 mg(65例)またはDTG 50 mg(33例)の48週間投与に2:1の比率で割り付け、いずれの群にもINSTIとは別にFTC/TAFを投与した[48-50]。
ビクテグラビル + FTC/TAF 対 DTG + FTC/TAF:24週目および48週目の有効性(FDAスナップショット)
Joel E. Gallant博士(MD,MPH):
24週目、48週目ともに、ビクテグラビル+FTC/TAF群のウイルス学的抑制率はDTG+FTC/TAFと同等で、ウイルス学的失敗率はいずれもきわめて低く、薬剤耐性も生じなかった[48]。ウイルス学的抑制率は24週目が97% 対 94%、48週目が97% 対 91%と、差があるように見えるかもしれないが、本試験は比較的症例数の少ない第II相試験であることを考慮すべきであり、これらの差は統計学的に有意ではない。
Charles B. Hicks博士(MD):
同感です。ビクテグラビル開始例が65例、DTG開始例が33例のみであり、わずか1、2例のウイルス学的失敗の差が、割合(%)で示すと大きな差に見える。これらのデータから、ビクテグラビルはきわめて有用であることを示唆しているが、この非常に小規模な試験からDTGと比較した場合の有効性に関して、何らかの結論を導くことはできない。
ビクテグラビル + FTC/TAF 対 DTG + FTC/TAF:AEおよび臨床検査値異常

AE:有害事象、ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ、AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、BIC:ビクテグラビル、DTG:ドルテグラビル、FTC:エムトリシタビン、LDL:低比重リポタンパク質、TAF:テノホビルアラフェナミド、URTI:上気道感染
Joel E. Gallant博士(MD, MPH):
ビクテグラビル投与群とDTG投与群におけるAEの発現率に明らかな差はなかったが、やはり本試験から安全性に関する何らかの結論を導くことは難しい[48]。しかし、ビクテグラビル特有の安全性に関する目立った徴候はなかった。いくつかの試験において、DTGで認められたような神経精神系AEがビクテグラビルにも認められるかどうかは、本試験からは分からない[51]。幸い、十分な被験者数を登録した4件の第III相試験において、ビクテグラビル/FTC/TAF合剤と各種DTGベースレジメンの有効性、安全性および忍容性のよりよい比較評価が実施されており、その結果が2017年に報告される[52-55]。
ビクテグラビルの主な利点は、FTC/TAFとの配合にあると思われる。ビクテグラビルがDTGの良好な特徴を有し、多くの臨床医が支持するヌクレオシドバックボーンとの合剤化が可能であるとなれば、きわめて魅力的なシングルタブレットレジメンになるであろう。
Charles B. Hicks博士(MD):
ビクテグラビルが、きわめて有益な初回ART薬になるということについては完全に同感です。ビクテグラビルとDTGの問題は、部分的にその効果の程度に関連している。これらの薬剤はウイルス学的失敗がきわめて少ないため、耐性の出現を検出するのは難しいかもしれない。
Joel E. Gallant氏(MD, MPH):
同感だが、それは私には好ましいことのように聞こえる!
TMB-301試験: 治療歴のある多剤耐性HIV感染者における長時間作用型ibalizumab
Charles B. Hicks博士(MD):
Ibalizumabは、正常なT細胞機能に影響を及ぼすことなく、HIVのCD4+T細胞侵入を阻害する、CD4受容体上の立体構造エピトープを標的とするヒト化モノクローナル抗体である[56]。本剤は、多剤耐性HIV感染者の治療用に開発されたもので、この集団はINSTIベースのARTが広く使用されるようになってから減少している。
第III相TMB-301試験において、INSTI耐性患者68%、3クラスすべてのARV薬に対する耐性患者53%を含む、治療困難な多剤耐性HIV感染者40例を対象に長時間作用型ibalizumabを24週間にわたり評価した[57]。これらの患者のベースライン時の平均CD4+細胞数は、150個/mm3であった。第III相試験では珍しいことだが、TMB-301試験は被験者数が少なく、非盲検で、単一群であった。これは、ibalizumabはオーファンドラッグであるため、少数患者の試験での迅速承認が可能であるためである。
主要評価項目は、ibalizumab開始7日後である14日目のHIV-1 RNAが0.5 log10以上減少した患者の割合であった。7日目にibalizumab負荷用量2,000 mgを静注した後、失敗したARTレジメンを14日目まで継続し、その時点で、 HIV-1 RNA値に対するibalizumabの影響を評価した。この種の試験が頻繁に実施されていた8~10年前と同様、失敗したARTレジメンを至適化された背景治療の組み合わせに切り替えた。ibalizumab維持用量800 mgを21日目に開始し、その後は25週目の試験終了まで2週ごとに投与を行った。0~7日目は対照期間とした。
Ibalizumabの24週間にわたる有効性および安全性
Charles B. Hicks博士(MD):
Ibalizumabの投与によりHIV-1 RNAが0.5 log10コピー/mL以上減少した患者の割合は、ベースラインから7日目の時点で現行の治療レジメンを継続していた患者で3%であったのに対し、ベースラインから14日目の時点では83%であり、7日目の時点と比較して有意に高かった(P < 0.0001)[57]。実際に、ibalizumab投与患者のうちHIV-1 RNAの減少量がfull log(1.0 log10コピー/mL)に達した患者の割合は60%、14日目の時点でHIV-1 RNAの平均減少量は1.1 log10コピー/mLであった。24週目の時点で、ibalizumabによる維持療法を受けていた患者におけるHIV-1 RNAのベースラインからの平均減少量は1.6 log10コピー/mL 、HIV-1 RNAのベースラインからの減少量が1 log10コピー/mL以上であった患者は55%、2 log10 コピー/mL以上であった患者は48%であった。
登録患者のベースライン時におけるCD4+細胞の平均細胞数は150個/mm3、ベースライン時のCD4+細胞数が10個/mm3未満であった患者は12例であった。
欠測データを治療失敗としてカウントしたintent-to-treat解析で評価したCD4+細胞数の増加量は、以下の通りであった。
- ベースライン時のCD4+細胞数が、50個/mm3未満であった患者17例におけるCD4+細胞数の平均増加量は9個/mm3
- ベースライン時のCD4+細胞数が、50~200個/mm3であった患者10例におけるCD4+細胞数の平均増加量は75個/mm3
- ベースライン時のCD4+細胞数が、200個/mm3を超えていた患者13例におけるCD4+細胞数の平均増加量は78個/mm3
Ibalizumabによる重篤なAEが報告された患者は9例であり、そのうち1例は薬剤関連の免疫再構築症候群を発症し、本イベントの重症度は、本剤の投与中止を要する重症度のレベルに十分に達していた。死亡が4件発生し、死因の内訳は、肝不全、カポジ肉腫、リンパ腫、およびAIDS末期がいずれも1件ずつであり、この結果は進行したHIV感染症の患者集団に一致しているものであった。追跡不能であった患者は2例、同意を撤回した患者は3例であった。40例のいずれの患者においてもibalizumabに対する抗体は検出されず、モノクローナル抗体による治療のリスクの1つである薬剤に対する抗体の出現が認められなかったことは、好ましいことである[58]。
進化しているARTにおいて、ibalizumabがどのような位置づけになるのかについてはまだ明らかにされていないが、高度耐性ウイルスの出現が認められ治療選択肢がなくなっているごく少数の患者に対してibalizumabを利用できることは喜ばしいことである。
Joel E. Gallant博士(MD, MPH):
治療が困難なウイルスに感染しているごく少数の患者に対して、ibalizumabが役立つ可能性があるという見解に同感である。治療不可能なウイルス感染の基準に一致する患者1、2例を本試験に登録した他院の治験実施施設の医療提供者と、話をしたことがある。これらの患者において、特にtemsavir(gp120と結合する小分子阻害剤であり、CD4受容体に対するウイルスの吸着を妨げる作用がある)のプロドラッグであるfostemsavirの併用下でibalizumabを投与した場合に、久しぶりにウイルス学的抑制が達成された [59] 。医療提供者は、ibalizumabの投与手順が不便であるにもかかわらず、本剤の忍容性が優れていることについてもコメントした。注目すべき点は、CROIで報告されたもう1件の試験でibalizumabの筋肉内投与の実現可能性が評価され、患者にとっての利便性が改善される可能性もあることが示された点である[80]。
LATTE試験:2種類の経口薬CAB + RPVによる維持療法の有効性および安全性の144週間にわたる追跡結果
Joel E. Gallant博士(MD, MPH):
CROI 2017では、Margolis氏および共同研究者[60] が、治療歴のないHIV感染者に対する維持療法としてのカボテグラビルとRPVの経口併用療法を評価した用量範囲探索、無作為化、第IIb相LATTE試験の144週間の追跡結果を発表した。さらにこのレジメンを、長時間作用型の筋肉注射用の剤形を用いて施行する場合については、第IIb相LATTE試験と並行して行われている第IIb相LATTE-2試験で評価されている[61]。
LATTE試験では、243例の患者が、EFV 600 mgと2種類のNRTIを96週間併用する群(n = 62)、または導入レジメンとしてカボテグラビルと2種類の NRTIを24週間併用した後、96週目まで経口維持療法としてRPV 25 mgの併用下でカボテグラビルを10 mg(n = 60)、30 mg(n = 60)、または60 mg(n = 61)の用量で投与される群のいずれかに無作為に割り付けられた[60,62,63]。カボテグラビルとRPVを併用した患者のうち、96週目の時点でウイルス学的抑制(すなわち、HIV-1 RNAが50コピー/mL未満)を達成していた患者の割合は76%であった[62,63] 。その後、患者は、選択された用量30 mgでカボテグラビルを投与するLATTE試験の非盲検期に移行することができた[60,62,63]。
長期的には、カボテグラビルは非経口的に使用される可能性が高いと思われるが、今回の検討では、経口薬のカボテグラビルとRPVをLATTE試験の非盲検期に連日投与された患者を144週目の時点まで追跡し、この併用レジメンの長期的な有効性および安全性を評価した[60]。
LATTE試験:2種類の経口薬CAB + RPVを用いた維持療法によるウイルス抑制の144週間にわたる持続

AE:有害事象、CAB:カボテグラビル、d/c:中止、ITT-E:治験薬投与を受けたintent-to-treat集団、ITT-ME:維持用量の治験薬投与を受けたintent-to-treat集団、PDVF:治験実施計画書で規定されたウイルス学的失敗、RPV:リルピビリン、Tx:治療
Joel E. Gallant博士(MD, MPH):
非盲検期に実施したad hoc解析では、カボテグラビルとRPVの併用による維持療法によってウイルス抑制が144週間持続することが示され、HIV-1 RNAが50コピー/mL未満となった患者の割合は、治験薬投与を受けたintent-to-treat集団(カボテグラビルを1回以上投与された患者)の解析では67%、維持用量の治験薬投与を受けた intent-to-treat集団(維持用量のカボテグラビルを1回以上投与された患者)の解析では76%であった[60] 。治験実施計画書に規定されたウイルス学的失敗は9例の患者で確認され、そのうち6例は導入/維持期に確認され、3例は非盲検期に確認された。後者の患者3例中2例では耐性が出現し、そのうち1例では1つのINSTI変異(V151V/I変異) が認められ、もう1例では2つのNNRTI変異(K101E変異およびM230M/L変異)が認められた。ウイルス学的失敗が確認されなかった患者1例で、2つのNNRTI変異(E138K変異およびV108V/I変異)が認められた。このように、耐性が出現したとしてもごくわずかなDTGとは異なり[17,64] 、カボテグラビルでは耐性が出現する可能性がある。これまでに述べた結果で示された薬剤耐性との関連性は、これらの薬剤を注射薬として開発することを支持する根拠となっている。しかし、将来的には注射薬に切り替える前の導入段階では経口薬も使用可能であろう。
Charles B. Hicks博士(MD):
実際に、これらの結果は、このレジメンで用いられている薬剤が有効であることを示すことで、このレジメンの注射薬の開発に向けた理論的根拠を提供している。次の課題は、患者にとって最も利用しやすく、治療成功に至る可能性が最も高いのはどの投与経路を利用した製剤なのかということである。すでに述べたように、LATTE-2試験では、長時間作用型の筋注用製剤が最善の選択肢であるか否かについて検討している[61]。
CD01延長試験:初回ART実施後のPRO 140単剤による長期維持療法
Joel E. Gallant博士(MD, MPH):
PRO 140は、CCR5に対するヒト化モノクローナル抗体であり、HIV治療を目的とした研究が長年にわたって行われている薬剤である[65]。第IIb相CD01延長試験では、ARTで安定しているCD01試験の患者16例に対し、PRO 140の週1回皮下注射による単剤療法を実施した(実施期間は3年以下)[66]。PRO 140でウイルス学的抑制を達成した期間が40週間を超えた患者が81.3%、2年間を超えた患者が62.5%であったことは注目に値する。この16例中、ウイルス学的失敗が確認された患者は5例、転院により治験を中止した患者は1例であった。
本試験は小規模であるが、PRO 140を週1回皮下注射する単剤療法が、HIV治療における維持療法として有望であることを示している。PRO 140の単剤療法および併用療法の第II相および第III相試験が進行中である[67,68]。
PRO 140の薬剤開発を継続させる原動力となっているのは、長時間作用型の非経口薬の開発に対する大きな期待であり、長時間作用型の非経口薬をより多く手に入れることができるようになれば、これらの薬剤を真の長時間作用型レジメンに取り入れることができるようになる可能性がさらに高くなると考えられている。PRO 140がこのような薬剤の1つとなるかどうかは現時点ではまだ分からないが、長時間作用型の薬剤の開発が依然として継続されていることは心強い。
CROI 2017で報告されたその他の治験薬:前臨床試験および第I相試験

ATV:アタザナビル、EFV:エファビレンツ、LPV:ロピナビル、MoA:作用機序、n:ナノ、PK:薬物動態、RAM:耐性関連突然変異、RTV:リトナビル、SDN:固形ナノ粒子製剤、TAM:チミジン類似体変異、TDF:テノホビルジソプロキシルフマル酸塩
Charles B. Hicks博士(MD):
ご覧のように、CROI 2017では、新薬の開発に関して期待できる数の発表があった。この表に掲載されているのは、興味深い新しい作用機序(HIVカプシド阻害薬、ヌクレオシド系逆転写酵素のトランスロケーション阻害薬など)および特性(直交性の耐性プロファイル、徐放性製剤など)を有する一連の薬剤であり、これらの薬剤はまだ前臨床試験で検討中であるが、もしこれらが臨床試験で実証された場合は、現在使用されている併用レジメンに、きわめて有望な治療選択肢が新たに加わることになるであろう[69-72]。経口バイオアベイラビリティが増強されているEFVおよびロピナビルの固形ナノ粒子製剤も、第I相試験で検討されている[73]。
CROI 2017で報告されたその他の治験薬:第II相試験
Charles B. Hicks氏(MD):
この表は、第II相試験の段階にある3つの新たな治験薬を示したものであり、これには、PrEPを目的としたRPVの長時間作用型注射剤、および初回ARTで用いられるEFVに代わる低毒性の NNRTIであるelsulfavirineが含まれる[75]。前臨床試験から第I相、第II相、および第III相試験に至るまでの厳密な開発過程で多くの治験薬がふるい落とされることは避けられないが、さらに優れたART戦略の発見に向けた取り組みが行われていることに大変刺激を受け、勇気づけられた。
Joel E. Gallant博士(MD, MPH):
同感です。 1種類の錠剤を連日服用することで高い効果が得られ、かつ忍容性が良好なシングルタブレットARTレジメンを使用できる今日にあって、CROI 2017に参加していた人の間で多く話題に上ったことのひとつは、開発中のHIV治療薬が依然として多いことに大変驚いているということであった。特にジェネリック医薬品の台頭を考慮すると、これは驚くべきことである。HIV専門の医療提供者および治験責任医師として、薬剤開発が滞っていないことを喜ばしく思う。