2020年3月19日
HIV感染初期にPrEPを服用している患者における診断上の課題-PrEP服用を継続すると耐性が生じる可能性がある
Diagnostic challenges with PrEP use during early HIV infection; resistance may emerge if PrEP use continues
Slide from Michael Peluso's CROI 2020 presentation.
PrEP(HIV感染を防止するための標準的な薬剤)は指示にしたがって(毎日またはオンデマンドで)服用すると非常に効果的であることが明らかとなっている。アドヒアランス良好な場合にPrEPが失敗するケースはまれである。耐性ウイルスの伝播によって、PrEPの失敗が引き起こされることがある。
しかし、HIV感染初期で感染が未確定の時期にPrEPを服用していると、ウイルス抗原量の減少やウイルスに対する抗体産生の遅れにより診断が複雑になることがある。
San Franciscoで実施した研究では、HIV感染初期で感染が未確定の時期にPrEPを服用していた11名の症例(「HIV/PrEP重複」と呼ぶ)の結果が示された。
6名の参加者はPrEP服用中にHIVに感染したと考えられ、一方、参加者5名はPrEPを開始していてPrEP服用時の定期検査においてHIV感染が確認された。
研究者らは、このような状況下における診断上の課題をまとめ、3つのシナリオを特定した。
まず、感染が未確定のHIV急性期で、かつウイルス量が多い人がPrEPを開始すると、薬剤耐性が生じる可能性がある。このような症例は、PrEP服用時の定期検査としての抗体検査を受ける4日前にHIVに感染した参加者1名でみられた。
2番目のシナリオとして、この研究で認められた1名の症例より、曝露レベルが非常に高い場合にPrEPが「圧倒される」可能性があることが示された。PrEPを1年間服用しアドヒアランスが良好であった男性は、性的活動が増加した(約45名のパートナーとコンドームなしの受容性の肛門性交をした)期間に受けた検査で感染が確認された。研究者らは、HIVへの曝露レベルが高かったことからPrEPがその有効性を失い閾値を超えた可能性があることを示唆している。
3番目は、PrEP服用を中止していた男性が、新しいパートナーと性交渉した3日後に再び服用し始めた症例である。このパートナーはその後の検査によりHIV陽性でウイルス量も多いことが判明した。この試験参加者は最初の検査では陰性であったため、薬剤がPEP(曝露後予防)として作用していると考えられた。しかし、3週間後に完全なプロウイルスHIV DNAが検出された。その後の検査は保留となっている。
急性HIVと診断された患者7名のうち4名は薬剤耐性を生じていなかった。この4名の患者は、PrEPを開始してからウイルス量検査が陽性(およびPrEP服用中止)となるまでの期間がそれぞれ2日、2日、7日および15日であった。3名の患者がエムトリシタビンのみに対して薬剤耐性を示した。HIV感染確定前にこれらの患者がPrEPを服用していた期間は、それぞれ29日、35日および122日であった。
テノホビルに対する耐性を示した症例は認められなかった(これは臨床上非常に重要である)。この研究により、HIV感染の急性期にPrEPを2〜3週間以上服用すると耐性を生じやすくなることが示唆された。
関連サイト
- Read about the San Francisco study in full on aidsmap.com
- View this abstract on the conference website
- Read about the Thai study in full on aidsmap.com
- View this abstract on the conference website
本記事は日本国外の治療に関するニュースであり、本邦では承認されていない薬剤あるいは本邦とは異なる効能・効果、用法・用量で使用されている成績が含まれていますので、ご注意下さい。
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